Superposition de la philosophie et de ...

中村大介による哲学と他のものを「重ね合わせ」ていくブログ。目下は探偵小説の話題が中心になります。

笠井潔

〈二〉と〈一〉をめぐる探究:笠井潔『オイディプス症候群』・『吸血鬼と精神分析』

今回取り上げるのは、笠井潔氏の矢吹駆シリーズ第五作『オイディプス症候群』(2002)、及び第六作『吸血鬼と精神分析』(2011)である。以前論じた『哲学者の密室』(1992)のロジックと事件構造を出発点に据え、これら二作品がどのようにそれを展開、ない…

思想論としての探偵小説、あるいは探偵小説の思想:笠井潔『哲学者の密室』

今回は笠井潔氏の矢吹駆シリーズ第四作、『哲学者の密室』(1992)を取り上げる。多様に論じうる原稿用紙三千枚のこの大作の中で、ここではとある一点 ー 探偵小説としてのロジックの中心をなす箇所 ー に着目し、いかにして探偵小説と思想論とがそこで巧み…

「見立て殺人」の一到達点:笠井潔『サマー・アポカリプス』

今回は笠井潔氏の矢吹駆シリーズの第二作目にして傑作『サマー・アポカリプス』(1981)を取り上げる。前回『バイバイ、エンジェル』を論じた際は、このシリーズ第一作目が通常扱われる際のサブジャンル=「首なし屍体もの」とは、敢えて異なった視点から考…

もう一つの極北:笠井潔『バイバイ、エンジェル』

笠井潔氏の矢吹駆シリーズの新作『煉獄の時』が近々出るとのことで、シリーズの読み返しを始めている。今回は記念すべき一作目、『バイバイ、エンジェル』(1979)について少しまとめておこうと思う。周知のことの振り返りという側面もあるが、第2節以降で提…

「笠井潔『バイバイ、エンジェル』パリ草稿ノート発掘」を読んで:ひとまずの走り書き

『ジャーロ』第80号に掲載された「『バイバイ、エンジェル』パリ草稿ノート発掘」を読んだ。笠井潔氏の『バイバイ、エンジェル』は物理学者になろうとしていた私を哲学者へと方向転換させることになった、私にとって紛れもない「青春の書」であり、この本に…