2024-01-01から1年間の記事一覧
今回取り上げるのは、映画化もされたアガサ・クリスティーの『ねじれた家』(1949)である。本作はその「意外な真相」によりとりわけ知られているが、記述・叙述の面でも、この作家の美質が示されている。いやむしろ、ミス・ディレクションという叙述面に注…
アガサ・クリスティーの『満潮に乗って』(1948)を久々に読み返した。この作品は優れたトリックと叙述上の技巧を含んだ傑作であるが、同時に、ナラトロジーで言うところの「焦点化」に関して、探偵小説というジャンルにおける興味深い問題をも提起している…
今回はアガサ・クリスティー円熟期の佳作、『愛国殺人』(1940)を取り上げる。この作品は傑作・秀作とまでは言えないにしても、この時期に典型的な叙述の技巧、及びトリックを見ることができる興味深い作品である。以下、叙述とトリックという、その二つの…