Superposition de la philosophie et de ...

中村大介による哲学と他のものを「重ね合わせ」ていくブログ。目下は探偵小説の話題が中心になります。

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

二つの系列の交錯:エラリイ・クイーン 『盤面の敵』

エラリー・クイーン の『盤面の敵』(1963)を再読した。これは『災厄の町』以降のクイーン作品群において、特筆すべき地位をもつ作品と思われる。その「特筆すべき地位」をここでは、本作のネタを割りつつ示していきたい(訳及びページ数はハヤカワミステリ…

過渡期の秀作:エラリー・クイーン『靴に棲む老婆』

エラリー・クイーンの『靴に棲む老婆』(1943)を宇野利泰訳で読み返したので、備忘代わりに少し書き留めておきたい。 以下、本作の核心だけでなく、後期のクイーンの主要作品(『十日間の不思議』、『九尾の猫』、『ダブル・ダブル』、『悪の起源』、『最後…

探偵小説の形成に「断絶」は存在するか:一つの仮説

自著の合評会で受けたとある指摘を色々と考えてきたのだが、考察が徐々にまとまってきたので、ここで一旦まとめておきたい。テーマは、〈探偵小説の形成に、仮に「断絶」とでも呼ぶべきものがあるとしたら、それはどのようなものか〉である。「断絶」には無…

後期クイーンの二つの系列:『十日間の不思議』を手引きに

『災厄の町』以降のエラリー・クイーンの作品群、いわゆる「後期クイーン」を暫定的に二つの系列に分けてみようと思う。考察の手引きとなるのは、2月に越前敏弥氏による新訳が刊行された『十日間の不思議』(1948)だ。 今後の研究に向けたノートのようなも…