Superposition de la philosophie et de ...

中村大介による哲学と他のものを「重ね合わせ」ていくブログ。目下は探偵小説の話題が中心になります。

探偵小説一般

探偵小説の過去と現在:フーコーの思想から

『現代ミステリとは何か:二〇一〇年代の探偵作家たち』(南雲堂、2023年)を読み、色々と触発されたため、最近の日本の探偵小説、ミステリーについて漠然と考えてきたことを、ここでまとめておきたい。私は本書で論じられている「二〇一〇年代」の作品群を…

「伏線」と「手がかり」の変遷をめぐって:佐々木徹編訳『英国古典推理小説集』を読んで

この記事では、佐々木徹編訳『英国古典推理小説集』(2023)を読み、それに触発されて思いついたことを書いてみたい。それは、探偵小説における「伏線」と「手がかり」の、いわば史的変遷に関するものである。したがって、記事の内容は同書所収の作品に限定…

〈探偵小説の記号図式〉に対する補足(2):第二次性について

昨日の記事に続いて、「探偵小説の記号図式」に対する補足をおこなう。今日は「第二次性」についてである。 第二次性とは、「何が起きたか?」という記述の対象としての〈事件〉のカテゴリーであり、手がかりを読むことや推理という〈読解〉を通して事件を解…

〈探偵小説の記号図式〉に対する補足(1):登場人物について

今回そして次回と、私が探偵小説の形成を考察するために作った「記号図式」に対する補足事項を書いておきたい。今回補足したいのは、登場人物についてである。 まずは私の記号図式を掲げておこう。 詳細は省くが、最低限押さえておくべきこととして、「第一…

探偵小説の形成に「断絶」は存在するか:一つの仮説

自著の合評会で受けたとある指摘を色々と考えてきたのだが、考察が徐々にまとまってきたので、ここで一旦まとめておきたい。テーマは、〈探偵小説の形成に、仮に「断絶」とでも呼ぶべきものがあるとしたら、それはどのようなものか〉である。「断絶」には無…

「記述者=犯人」ものと叙述トリックの関係について

「記述者=犯人」ものと叙述トリックの関係について、以前考えたことを備忘代わり にまとめておく。 「記述者=犯人」の作品では、作品内の事件とは別に、その事件を記述すること自体が(読者にとって)事件になる、という二つの異なったレベルの「事件」が…