エラリー・クイーン
今回はエラリー・クイーンの記念すべき第一短編集、『エラリー・クイーンの冒険』(1934)を論じる。本作は海外探偵小説史上、屈指の名短編集であり*1、まずは同時期の〈国名シリーズ〉との関連で扱うのが通例であろう。だがここでは異なったアプローチを採…
今回は久々にエラリー・クイーンの作品を取り上げる。ライツヴィルものの第二作、『フォックス家の殺人』(1945)である。以前『災厄の町』から『盤面の敵』に至る後期クイーンに関する論文を書いたとき、この作品については扱いにやや困り、検討しなかった…
エラリー・クイーンの諸作品で、あるべきものが「無い」ことが手がかりとなるという、いわゆる「ネガティブ・クルー」が重要な役割を演じていることは、既にフランシス・M・ネヴィンズによっても指摘されている*1。ここではこの「ネガティブ・クルー」に関連…
エラリー・クイーン の『盤面の敵』(1963)を再読した。これは『災厄の町』以降のクイーン作品群において、特筆すべき地位をもつ作品と思われる。その「特筆すべき地位」をここでは、本作のネタを割りつつ示していきたい(訳及びページ数はハヤカワミステリ…
エラリー・クイーンの『靴に棲む老婆』(1943)を宇野利泰訳で読み返したので、備忘代わりに少し書き留めておきたい。 以下、本作の核心だけでなく、後期のクイーンの主要作品(『十日間の不思議』、『九尾の猫』、『ダブル・ダブル』、『悪の起源』、『最後…
『災厄の町』以降のエラリー・クイーンの作品群、いわゆる「後期クイーン」を暫定的に二つの系列に分けてみようと思う。考察の手引きとなるのは、2月に越前敏弥氏による新訳が刊行された『十日間の不思議』(1948)だ。 今後の研究に向けたノートのようなも…
一般に「後期」と言われる時期 ー『災厄の町』から『最後の一撃』まで ー におけるエラリイ・クイーンの主要作品を読み返してきた。その再読を通して思ったことを、ここに簡単に書いておきたい。この記事は雑考、あるいは備忘録のようなものであり、今後の思…
エラリイ・クイーンの『ダブル・ダブル』(1950)を再読した。この作品の「見立て殺人」(ここでは数え歌殺人)について少し書いておきたい(最初は細かい話となる)。同作の引用は青田勝訳(ハヤカワ文庫)による。 (1)まず探偵小説の「記述」に関するあ…
エラリイ・クイーンの『九尾の猫』(1949)を越前敏弥氏の訳(ハヤカワ文庫、2015年)で読み直した。ここでは、おそらくはあまり指摘されているとは思えない、クイーン作品群における本作独自の位置を取り出してみたい。この傑作と言って良いだろう探偵小説…
エラリイ・クイーンの傑作『災厄の町』(1942)について感想を書きたいと思います。なお完全ネタバレありです。というよりもネタバレしかしていません。丸括弧内の算用数字は越前敏弥氏の訳(ハヤカワ文庫、2014年)の頁数を示します。それでは始めます。 【…