この記事では、佐々木徹編訳『英国古典推理小説集』(2023)を読み、それに触発されて思いついたことを書いてみたい。それは、探偵小説における「伏線」と「手がかり」の、いわば史的変遷に関するものである。したがって、記事の内容は同書所収の作品に限定されない。探偵小説黎明期の作品が、他にも取り上げられることになる。
予め述べておくが、ここで提示されるのはあくまでも「仮説」である。それゆえ、論証はいまだ不十分であり、多分に「言い加減な」ものでさえあるかもしれない。しかし論文と異なり、自分の暫定的な考えを取り急ぎまとめて示し、識者の意見を乞う、というのはブログの一つの使い方であるだろう。ご意見のある方は、コメント欄に書き込んでいただけると嬉しく思う。
*丸括弧内の頁数は断りのない限り、同書のものである。
【第1節ではポオ「モルグ街の殺人」、フィーリクス『ノッティング・ヒルの謎』の真相に、第2節ではバーク「オターモゥル氏の手」、及びチェスタトン「折れた剣」と「見えない人」の真相にそれぞれ触れる。】
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